山崎はるかのメモ

OCNエコノミーは役立つか?

-目的と それに必要な機器のバランス-

 


はじめに

1998年1月末。
ついに私は 自分でサーバを立ててNTT・OCNサービスと直結した。

この当時から「128Kは回線リソースに不安がある」だの「必要な周辺機器が割高」など、いろいろ言われていたが 事実は どんなもんだろうか。

これから 個人やSOHOで OCNエコノミーに直結しようという方に、私の1年半を振りかえって、その実際を語ってみたい。

 

Webサーバー -1日1000人ぐらいまでは余裕-

私の事務所のWebサーバは 、トップページで 1500 ~900人(ページヴュー)/day、平均は ほぼ1200人/dayである。
これは 1年ちょいで メガヒットクラスの「人気サイト」と呼ばれるレベルだが、この数でも OCNエコノミーは 余裕で耐えてくれる。
私も 自宅からダイヤルアップで接続することがあるが、別にストレスを感じた事はない。
あるとき 3000トップヒットが1週間続いたことがあったが、このときは さすがに重かった。
したがって 2,000人/dayのホームページが OCNエコノミーの上限目安と考えてよいのではないか。

もちろん 私のサイトはテキストコンテンツが中心だから、これが階層が深かったり・画像中心だったりすると、もっと上限は下がってくると思う。

私は オリジナルソフトをWeb上で配布しているが、ダウンロードサイトは 別のプロバイダをレンタルして配置している。これは 後に述べる「DNS」の特性を活かせるからだが、原則として 画像やMP3などのデータファイルは OCN以外に置いて 本回線のトラヒックを軽くする工夫が必要だ。

 

DNSサーバー -これがOCNエコノミーの真髄だ-

OCNエコノミーには、DNSもメールサーバも OCNに預けて 回線はアクセスだけに使用する契約形式があるが、それは ちょっともったいないような気がする。

メールアドレスに必ずドメイン(taro@nihon.go.jp←この部分)が必要だが、これを認識して特定のサーバを指定するのがDNSの役割である。

したがって オリジナルドメインや 自由なメールアドレスは、Webサーバやメールサーバだけでは成立せず、かならずDNSサーバが必要である。
最近は 多くの人がメールアドレスを持つようになったが...サークルや職域で バンバン、メールアドレスを発行する特権は、やはりDNSがあってこそ行えるわけである。
女の子をつかむときのサブサイドになりつつあるしな。

また DNSの設定を自由にいじると、自分のマシンにさらに細かいサブドメインをつけたり、他人のサーバを あたかも 配下のサーバに見せる事すら カンタンにできる。(レンタルサーバに自分のドメインを割り当てるわけだ)
応用として、あんまり大声では言えないが、自分が別に契約するプロバイダのメールアドレスに 自分のドメインをつけて、送受信することも DNSを持てば可能だ。

このことからも、多少・勉強しなければならないこともあるが、DNSは自前で持つほうがよい。

 

どのくらいのサ-バマシンが適当か -使いふるしでいい場合もある-

一昔前、「サーバ」と言えば 「i386-66MHz・1G-HDDのモンスターマシン」という 今思えば 笑うしかないコピーでカタログに登場していた。
サーバというのは「データ分配処理」という コンピュータが極めて得意とする作業を行う。
つまり よほどのことがない限り、そんなにマシンパワーを食うものではない。

実際 OCNエコノミーの「128K」の場合、Linux や FreeBSD などを使えば、マシンは Pentium100MHzもあれば充分である。

ただ WindowsNTのように、過剰な高機能によって「たかが Webサーバに そんなにリソースを食う必要があるのか?」というOSもあるから、マシン選定には 非常に迷うところであろう。

 

PC-UNIXの最大の長所は、「その軽さ」であり、スペックとしては

(Linux や FreeBSDの場合)※Web・mail・DNS・Proxy
本体:Pentium100Mhz
メモリ:32MB
HDD:2GB

これで充分である。うまくすれば、本体+ルータ込みの10万円で まだおつりが出る。
ちょっと古いPC-9821を持ってて、捨て場に困っている人には FreeBSD が使えるから、最高かもしれない。
OSも周辺ソフトも 限りなくタダだし、なおかつ サーバ群も非常に洗練され・安定度も高く ・しかも豊富...と 言う事なしである。

ただし、その最大の短所は「馴れるまでは・とにかく立ち上げが難しい」ということだ。
ちょっとヘンなボードを使おうものなら、カーネルの再構築が必要になってくるが、これは相当の熟練者でも時間がかかる作業である。
まして「パソコンの扱いが得意なだけ」で「システムレベルは苦手」という人には、とてつもなく 高いハードルとなる。
最近は 入門書が増えてきて ずいぶんラクにはなってきたけどね。

 

一方 WindowsNTサーバー(NTSV)は とにかくカネがかかる。
マシンも それなりのモノを準備しなくてはいけない。

(WindowsNT(SV)の場合)※Web・mail・DNS
本体:Pentium166Mhz以上
メモリ:64MB
HDD:4GB

これに ファイヤーウォールとプロキシを付けると、インストールOS・ソフト類だけで 安く買っても20万円は超える。
これにハードウェア類を加えると、どうしても40万円近い出費は避けられない。

ただ 最大の長所である「設定のしやすさ」は非常に魅力的だ。
これは GUIだからと言うよりも、ハードウェアの差異を すべてOSが吸収するため
「入門書に書かれてあるとおり」に設定すれば「ほぼ まちがいなく動く」ということによるものだ。
もちろん 入門書がタコだと そうもいかないが、NTSVの場合 OCNが「DNS別の設定例」をマニュアルで出してたりするから 安心感は各段である。

さらに OSのプログラムソースが公開されていないため、よくも・わるくも「ハッキングに強いOS」になっている点も見逃せないだろう。

お金があって「とりあえずサーバを立てたい」という人にはNTSVがおすすめ。

安く・早く・そのサーバでいろんなことをしたい・しかも時間はある...という人には PC-UNIXがおすすめ、ということになる。

どちらにしても 気をつけてほしいのは、「サーバを構築するには、2台のマシンを用意して、そのどちらかで行う」ことである。
これは サーバを構築する最中に、「ネットでソースやマニュアルをとってくることが多い」からである。
メインマシンをツブすと、致命的な環境に陥る事もあるので要注意だ。

 

ルータは 何がいいのかな?

OCNエコノミーごときに シスコの高級ハブや高級ルータは 必要ない。
NTT-TEの「MN128シリーズ」や、富士通の「ネットビークル」などが 初心者にはおすすめかもしれない。

ルータ選びで大切なのは、「フィルターやNAT」を どこまで 多く・細かく設定できるかだ。
フィルターを上手に設定したり、それにNATを組み合わせれば ヘタなファイヤーウォールよりも 速く固くなる場合がある。
なにより OCNエコノミーの「128K」だけのために、ファイヤーウォールマシンを一台設置するのは「経済的リソース」に負担がかかる。

最近の有名ルータは デフォルト(初期設定)の段階で、かなり固くなっているから、かなり安心だ。

ただ、それに任せきる事は かえって危険だから 次の順序で導入(勉強)しては いかがだろう。

  1. OCN工事完了
  2. ルータ設定
  3. DNS設定
  4. メール設定
  5. ルータのフィルタ設定
  6. Webサーバ
  7. FTPサーバ
  8. (UNIXの場合)inetd.conf
  9. (UNIXの場合)TCP-Wrapper
  10. ファイヤーウォール

この順序だと、手前の勉強が 次の応用に転用され・しかもセキュリティ的に固くなる。

 

おすすめの書籍

サーバに関してのみ 1冊で なんでも「おっけー」という書籍は かえってよくない。
サーバの導入・管理というのは 多面的なモノの見方というのが大切だし...なにより 書籍に記述されていることが「自分の環境に合わない」場合は、別のアプローチが必要になる。
その際 1冊の書籍だと たちまち苦境に陥ってしまう。

そうでなくても ぶあつい本を1冊・ドカンとひざの上において いちいち・あっちゃこっちゃ めくりまくるというのは効率が悪い。

そういったことを考えれば、いかに組み合わせて持つかが大切になるだろう。

【WindowsNTSV】

【PC-UNIX】(FreeBSD)

なお NEC PC-9801/21 シリーズで、PC-UNIXを導入する場合は さらに以下を追加

これらの書籍のほとんどに、私だけでなく UGTOPの石川英治氏の推薦もついておる。
っていうか、氏は電話会社でサーバ管理をしておったのだが、会社のカネで 書籍を買いまくっておった。その中で 最終的に「よく使う書籍」として生き残ったものを、「はるかさん・これいいよ」と薦めてくれたのである。
実際、これらは かなり いいカンジだ。

(99/06/04・山崎はるか)


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