山崎はるかのメモ

東京湾・東海・四国各沿岸での
cdmaOneとDoCoMo(800MHz)入感状況

- 実際に使ってみると、やっぱり ちがうもんだ -

 


はじめに

私は結果として「cdmaOne」派である。

じつは、ちょっとした事情で、そうなのだ。
DA電研は、その前々身である「パソコンショップ山崎屋」の時代に、「セルラー電話・販売店」だったことがあるのだよ。(1993年ぐらいからだ)

いや、今でも販売店として登録されており、いつでも auの携帯電話を販売できる権利を持っている...はずなのだが、必要書類が どっかにいっちまって、現在 中間代理店がどこなのかすら わからん。
auに問い合わせてもみたが、「取引口座が残っていること」は認めたものの、統合時のゴタゴタで、どこの・誰が うちに携帯電話を卸すのか 決まっていないらしい。

いま、うちから携帯電話を販売したとすれば、きっとおもしろいことになるだろう...まず まちがいなく、オリジナル携帯にして売るからだ。
(ただし 他社のような「外見」のオリジナル化や 機種変縛りはせず、「中身」のほうをオリジナルにする。もちろんファームレベルでだ。これで再参入競争力を持てる)

まあ、企業戦略的にはもう少し auブランドのシームレス(サービスの全国統一)が進むまで、このジャンルの進出には様子をみるべきだろうな。

出張のついでにやってみた -ヘンなことを試してみることで、あらゆる原理を学ぶチャンスになる -

そのうち、別記事としても書くが、DA電研の系列子会社のひとつ「トサナビ」が立てた「事業企画」と「決算」を審議するため、フェリーで高知に向うことにした。

じつは、これまでの経験から、航空機を使うと かえって「バタバタ」してしまい、その前後が 急激な過密スケジュールになってしまうことがわかっており、それを今回は避けたかったのだ。
ただでさえ、ここんとこ 「もう ええがな」ってぐらい スケジュールが混んでたからな。

そして、フェリーを使うことによって...たとえば東京→高知間であれば、航行中の20時間を使って、船上で仕事ができる。(ノートPCで)
つまり、地上の残りを「あとは船上で」というふうに、かえってゆったりと 前後をすごせるため、仕事も「乱暴」にならない。

「なやし(柔軟性)」というのは 大切だ。
若い連中は、なんでもカツカツに 先々を決めたがるが、それは「未来が確定できるもの」と信じているからだろう。
だが、未来というのは 事前に綿密な決定ができるほど、確固としたカタチで存在しているわけではない。

未来に対し、自分や周囲を ある程度 「誘導」することはできるが、「こうなる」「こうしよう」と確信して、企画を立てることは、そうならなかったとき あわてふためくことになる。
(そして、事実「思ったようにならない」ときのほうが、圧倒的に多い)

未来を変えることができるのは、そういった柔軟性が「未来」に存在するからこそだ。
未来が「柔軟性」に富む以上、その未来と仲良くしたいのであれば、あなた自身も柔軟でなければならない。

あわてたときの「仕事」や「計画」は、多くの場合 粗雑だ。
要所に「時間的なゆとり」を置くことは、いざというときでも 丁寧な仕事を可能にさせる。

今回の出張も そのとおりだったし、むしろ予定していた以外の仕事...いわゆる 今回の実験も可能にした。


すなわち、「日本の太平洋岸を航行中の船舶からPDCやcdmaOneは使えるか」
という実験である。

結論から言うと、PDC・cdmaOne ともに、一部地域を除き「使える」。
その際、沿岸が見えなくてもよい。

上図は、東京港発→那智勝浦港経由→高知港行き「さんふらわあ・くろしお」。
ルートはGPSがコンタクトした座標を できるだけ再現している。
(GPSを使うと、船舶の航路は それほどまっすぐなものではない、というのがよくわかる)
(※船舶のナビゲーション・航法というのは 私にとって門外だが、航空ナビゲーションの観点からすると、かなり とんでもないことに見えてしまう)


どうやら海上では、基地局からの電波は 80Kmぐらい平気で 到達するらしい。
そして、移動機側も たかだか0.3W程度の出力のくせに、この距離を きっちり基地局側が受信している。
これが どういうことかと言うと、小学校の朝礼などで 校長先生が使う「ワイヤレスマイク」が、80Km先で受信できる、といえばよいだろうか。

これは まったく 驚くべき技術だ。
(ただ、今回の場合は 海上という「地形」特有の利点も考慮すべきだろう。詳しくは後述する)

ところで、その携帯電話の使えない一部地域を除きというのが、どこか? といえば。
なんと東京湾内なのである。
もちろん全水域で使えないわけではない。
ある条件が発生すると 極端に使用に耐えない状況となる。


中の瀬航路から第二海堡まではcdmaOneが不安定

 

・東京FTに接岸する「さんふらわあ・くろしお」

 

東京湾の海堡(かいほ・かいほう)について

首都防衛を目的として明治時代に ほぼ人力で作った、砲台人工島。
第一海堡から第三海堡まであるが、まともに残っているのは写真左奥の第一海堡と、写真中央の第二海堡のみ。
釣りマニアと軍事マニアにはよく知られている島らしい。
私は 学研・歴史群像(隔月刊)の解説記事に出逢うまで、存在すら知らなかった。

なお、第二海堡は 一般人でも上陸することができる。

第二海堡に上陸した方々のサイト

 


 


7/1 19:50 出航早々、ノートPCに omron ME144KTI/C と、cdmaOne C404S を接続して、出航時のデジカメ画像をパケットでテスト送信。
見事成功した。

ところが、出航後15分を経過したあたりで、cdmaOneのほうがおかしくなってきた。
ハタはバリ3立っているのに、発信シーケンスがはじまると、突然「ハタ0」に落ちてしまう現象が起きはじめた。

「はぁ...ん、なるほどね」
じつは ずいぶん昔、cdmaOneサービスが開始された当初、似たようなことがあったのだ。

みなさん ご存知のとおり、デジタル携帯電話機というのは、電界強度(電波がよく飛んできてるところ)の強い基地局を選んで通信するようになっている。
つまり 同じ地点に 複数の基地局の電波が到達している。

ところが携帯電話の周波数は有限であるから、同じ周波数の基地局同士が かぶってしまうことがある。
これを「干渉」とよぶ。
そのため、同じ周波数を使う 基地局同士は できるだけ遠くに配置するのだが、それでも干渉が 起きるときは 起きる。

これを防ぐために、携帯電話の基地局の電波は、「なるべく高い設置場所」から「下方向に照射」するようになっている。
わかりやすくいうと、「舞台のスポットライト」が「同じ色」で「重なることがないよう」 上から限定された範囲にあてられているようなものだ。

都市部では この「低サイドローブ化」が多く、その「下向き」によって、東京湾中央部になると電波が届かない!
いや、これには語弊がある。
携帯電話に、電波はなんとか届いても、基地局側が 携帯電話の電波に応じてくれないのだ。(受信の指向性)

で、なぜ この現象が cdmaOneで 強く出るか。
これはcdmaOneのスペクトラム拡散方式に理由があるのだろう。
周波数の切り替え権は、cdmaOneでは この場合、事実上 「基地局側」にある。
遠く離れた 移動機(携帯電話)の電波は、基地局同士で押し付け合いとなり、かえって むっちゃくちゃ離れたヒマな基地局が応じたりすることもある。

これら「ビームの角度」と「基地局の押し付け合い」の複合要因で、東京湾中央部では、cdmaOneに「基地局が少なかったころの現象」が起きるのではなかろうか。もちろん これは推測だが、私は かなり確信している。


では、DoCoMo(SO503i)は どうなったかというと、これが なかなか強い。
すくなくとも 東京湾全域で使用可能だった。
都市部・街中では バリバリ干渉しまくって ブツ切りされるDoCoMoが、東京湾内では 安定してimodeで通信できるというのは...cdmaOneとの 地位が、陸上と まったく逆転していて非常に笑える。

ひょっとして専用のアンテナ(エレメントかトランスポンダ)が 湾内のどこかにあるんじゃなかろうか。
なんせ NTTが 船舶電話を担ってた時代もあるぐらいだし。


なおcdmaOne は、浦賀水道(三浦海岸沖)に出たあたりから、状態が改善された。
これは 基地局の設置場所が、沿岸部・および沿岸部に迫った山の山頂になりはじめるからだろう。

海に近い山頂の基地局は、だいたい海抜300m以上にあるが、そうなると下向きのビームが 地球の円に沿うことになり、かえって 高い指向性を生むようになる。
(これ たしか 〜ほにゃらら効果などと「人の名前」がついてたハズだが なんだったっけ?)

さて、これを実感したのが三重県の沖合80キロ・熊野灘での写真が下である。

バリ3で、パケット通信も優雅に行えた。
この場所では、よほど天気がよくないかぎり、陸地は見えない。
というか 見えたとしても、角度的に海岸線は見えず、山が見えることになる。

それでも、この電界強度。

おそるべし、海の効果。

ちなみに さんふらわあ「くろしお」の電話設備

なかなか和風にカジュアルなフェリー「さんふらわあ・くろしお」。
この船の快適さについて、くわしくは、また別の機会に解説する。
いや、ホントいい船だよ これ。

それはともかく、ここでは、DA電研らしく、内部の船舶公衆電話(正確には DoCoMo)をスナップショットしたので掲載しよう。

 

日本沿岸・海の旅なら モバイラーっていいかもしれん

今回は、東京湾・東海・南紀・土佐湾でのルートであったが、基本的に 日本の各沿岸が この電界強度品質を保っているのだとすれば、海の旅に モバイル装備はなかなかイマジネーションが かきたてられる。

「旅にモバイル?」と いぶかるむきも あるかもしれんが、海の旅は ただ水平線を眺めるだけのものではない。

ぼーっと海を眺めていると、船の航跡に驚いた「とびうお」が パラパラパラーと何十匹と飛んでいったりする。
熊野灘では、フェリーにイルカが併走したし、運がよければ 土佐湾ではホエールウォッチングが楽しめる。(あれは、実際に その姿を見ると、なかなかに感動的なものがある)

ふと横を見れば、かもめが パンをねだりに真横を水平飛行している。
ちぎって投げると 上手に 空中で食べてくれる。

その向こうに、見たことのない島があれば「あれはなんだろう?」「どんな人が住んでいるのだろう」と、すっかり眠っていた自分の「子供の部分」が沸き立ったりもする。
その 懐かしい、気持ち。自分で自分をつつむような優しい気持ち。

「あれは なんだろう?」

そんなとき、モバイルPCがあると、ちょっとした「動く百科事典」として使えるのだ。
旅の最中に、あらたな旅ごころを かきたててくれる装置。
これは、この時代に生じた あらたな 旅の醍醐味である。

意外にも 私は、今回、出張という「仕事の最中」に強く そのことを感じた。
ゆとりというのは、どこにでも転がっているものである。

(2001/07/17・山崎はるか)

※2003/03/06 リンク等修正

※文中に出てくる地図のうち、二点をIncrement P MapFan から引用


Network Diamond Apricot - NAKANO.SRS

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