フェーズ2・純植物原料への挑戦(豆乳によるヨーグルト増殖)
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それにしても、なぜ こうまで てこずったか。
考えられる原因として、
・発酵温度に問題があるのか?
・ラブレ菌は 乳糖との相性がわるいのか?(果糖などの質的問題?それとも量的問題?)
という2点が浮かんだ。
前者の「発酵温度」については、思い当たるふしがある。
愛知県産業技術研究所・食品工業技術センターの伊藤雅子氏らから発表された、大豆乳のヨーグルト化に関する研究レポートによ
れば、使用したLb乳酸菌の培養に35℃を用いていること。
また、原典は失念したが、ある研究者の報告では、とあるLactobacillus属の至適培養条件は 35℃≧30℃>25℃ であったという記載を見た
ことがある。
それもあり、前回・最初に用いたヨーグルトメーカーは、うちでは 最低温のものを用いたのだが・・・それでも38℃以上というのは高すぎたのかもしれない。
糖の課題はさておき、まず問題の切り分けを兼ねて、「豆乳による 35℃条件化におけるヨーグルト培養」に挑戦する。
1.準備 | ||||||||||||
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材料
・設備
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2.発酵開始 | ||||||||||||
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3時間後に 赤外線放射温度計を使って、温度チェック 35.8℃を示したので、若干、温度を下げて 続行させる |
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12時間後。
発酵終了
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試食 メープルシロップを ぐるっとまわして、ババロア風にしてみた。 食べてみる。 これは・・・あんまり うまくない!! たしかに 豆乳のエグさは 完全に除去されている。これは すごい特徴だ。 が、例の独特の「香味」が きついクセになっている。 よーく 思い出すと・・・そうだよ、ラブレに 薄くのってる あの香味を 数百倍増幅したあの香りだ。 そうか ラブレ菌の出す成分ってこれかも。 京都の伝統食品“すぐき漬”も 「香り付けに」とかゆってるしなー すぐき漬を食べたことないから因果関係を確認できん。 今度、京都でたしかめることにする。 が、いずれにせよ、今回の結果は pH4.8であり、保存食ヨーグルト とはいえない。 実験としては成功でも、食品としては失敗である。 |
んー
一応、35℃の条件下で豆乳ヨーグルトが生成できることは 判明した。
じゃあ、35℃近辺のベストセッティング、すなわち 「最適な発酵条件」と、その際の「酸生成能」はどこにあるのか・・・ということになる。
・・・困った。
うちにある 理化学機器は、ほとんどが「化学・理工学」用なので、基本的に常温以上を作り出す装置ばかり。
常温以下の 40℃未満の微妙な温度管理を行う装置はない。
ここから先は、バイオなんだよね、バイオ!
しょうがない、あのお方
に ご登場願うしかない。
●ヨーグルティア YM-1200-ST
ヨーゲルトメーカー最強ブランド・ タニカ ヨーグルティア
植物性乳酸菌ラブレを使って、純植物性原料をベースに 各種ヨーグルトを安定的に作るには、これを用いるしかない。
40℃発酵の一般ヨーグルトはもちろん、25℃のケフィア、27℃のカスピ海ヨーグルト、果ては45℃発酵の「納豆」まで、これ1台。すべてのシーズンにおいて
安定的に かもしまくってくれる、最強の装置である。(2007年12月現在)
発酵タンク容量も 1,100ml という、マニアな細かさ。他のヨーグルトメーカーを使った方ならわかると思うが、「種を入れる量だけ ちょっと牛乳を飲んどく」という作業はこの機種には必要ない。
そのあたりを、わかりまくってる。
種菌も牛乳も、すべて どばどば と入れて、温度とタイマーをセットすれば、自動的に出来上がってしまう。
乳酸発酵どころか、イースト菌(ドライ)の展開まで行え、さらに大学の生物学研究室でも かなり重宝されているという素晴らしい傑作である。
これを作った タニカさんには、ヘタなモデルチェンジをしてもらいたくないね。傑作なんだから、そっとしといてほしい。
(東芝さんから
OEM が出ているぐらいだが、せいぜい この程度にしといてほしいw)
至適培養環境 調査試験
1.標準値 | |
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まず、酸化力の標準値をとる。 ここでの標準値とは、「ラブレ菌を入れない状態」で、豆乳を 35℃・12時間 加熱して、pHに変化がないかを調べることである。 本来の至適培養環境試験なら、実験後の試料(豆乳)を、新たな培地に添付し、さらに培養のうえコロニーを数える・・・といった作業になろう。 ・・・が! たかだか 自分で食うヨーグルトのために、そこまで するかっ! したがって、今回は pH・すなわち「酸生成能」によってのみ、培養状態を推定することにしたわけだが。 pH 一点調査に依存するわけなので、その基本値についてだけは しっかり とっておくことにする。 まず 酢酸を蒸留水で希釈して、「KAGOME 植物性乳酸菌ラブレ」とほぼ同じ、pH3.8 の溶液 80ml を作る。 これを 320mlの無調整豆乳と混合し、スターラー(攪拌装置)で30分攪拌した。 その結果、pH6.0 の豆乳混合溶液 ができた。 これを、ヨーグルティアで 35℃・12時間加熱したあと、30℃まで冷まし、pHを測定したところ pH5.8であった pHの変化率は 0.2低下±0.1であり、ほとんど 誤差の範囲内の低下であった。 すなわち、この試験下において、酸化率の標準値は pH0.1〜0.2 下げる程度のものと考えられる。 |
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ラブレ代用液の作成 → |
代用液と豆乳の攪拌後 |
35℃・12時間加熱後 |
12時間加熱後の pH |
40℃試験 | |
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無調整豆乳320ml+KAGOME植物性乳酸菌ラブレ80ml 40℃・12時間 → pH5.5 一応固まってはいて、局所的にはpH4.5のところもあるが、かきまぜた結果は pH 5.5であった。 |
35℃試験 | |
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無調整豆乳320ml+KAGOME植物性乳酸菌ラブレ80ml
35℃・12時間 → pH5.1 がっちり固まっており、スプーンが立つ
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30℃試験 | |
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無調整豆乳320ml+KAGOME植物性乳酸菌ラブレ80ml
30℃・12時間 → pH5.2 35℃より 若干 固まりが弱い印象はあるが、均一に硬化している
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以上の結果から、
豆乳+ラブレの 至適培養温度は、30℃〜35℃ であり、酸化力は pH0.9±0.1 (素材3:1種菌時)と推定された。
どこかで読んだ Lactobacillus属の至適培養条件 35℃≧30℃>(25℃) というのは、おそらく 本当のような気がする。
あの論文、どこで見たんだっけかなぁ・・・ 忘れちまったのが悔やまれる、というか、その研究者さんに申し訳ない。
結果として、追認するカタチになった。
発見次第、論文名と発表者名を掲載することにする。
→ ※判明・大日本インキ化学工業株式会社『スピルリナの乳酸発酵によるγ-アミノ酪酸(GABA)の高含有化及び血圧降下作用』(榊原正樹氏ら)の論文内
「3.3 Lactobacillus brevis NBRC12520の増殖に及ぼすpH,温度の影響」
(これによると、正しくは 温度37℃≧30℃>25℃ であった。)
● いよいよ次が見えてきた
純粋に豆乳を用いただけでの植物性乳酸菌ラブレの増殖は、生化学的には可能である。
しかし、そのままでは 食品に適さない。
理由は、
・第一に 「味がまずい!」 マズすぎる。
・第二に、ヨーグルトというには 酸度が低すぎる(他の菌を撃退できる酸度になっていない)→食品衛生上 問題がある
フェーズ3では、これらを 一挙に解決し、いよいよ、植物性乳酸菌ラブレを 思う存分、ガブ飲みすることを目指す!
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追記: 本実験企画が始まってから 自家製ラブレ菌飲料を飲みまくるハメになってるんだが。
(このメモに書いてあるのは 結果だけであって、そこまでの試行錯誤の産物も大量にあるわけよ)
で、それは なるべく「食して」処分してるんだが、そのせいか、この 2週間で体重が2kg落ちた。すとーんと。
「○○を食べるダイエット」みたいなのは信じてなかったんだが、一応 なんらかの根拠はあるかもしれんね。
どんなことも、あたまごなしに 否定はできないと思ったわ。
(2007/12/1・山崎はるか)