「ストーカー」【Stalker】...復讐・執着・報復・調査・督促など
それぞれの内的理由により、ある特定の人物に対して、忍びより・あるいは追跡し、その目的のために必要であれば
あらゆる物理的・精神的嫌がらせを繰り返し行う者。
嫉妬・偏執など精神面に起因した復讐・代償行為として行われる場合や、調査機関による捜査・金融業者による債権取り立て・報道機関による著名人に対する取材など
法的・職業的背景を持って行われる場合まで その動機・形態はさまざまである。
上記の「ストーカーの定義」について、驚かれる方は 少なくありません。
「ストーカー」とは 変質者や異常人格者というイメージを多くの方が持っているからです。
ダイアモンドアプリコット・迷惑電話相談室。通称ストーカーバスター。
日本国内で 唯一、ストーカーに対する専門的対応能力を持つ民間機関です。
活動は1995年1月に始まり・1998年9月30日に解散するまで
約300件の相談を受け、うち60件に出動・44件を解決しました。
その活動の中で得られた結論が「ほとんどのストーカーは精神異常者ではない」という驚愕すべき事実でした。
ストーカーは 普通に生き・普通に生活し・人と同じように自分の将来に夢を持っています。だから
外見上の識別は困難です。そして、自分の行っている行為がストーキングであるという認識がありません。
なぜなら、ストーカーの多くは
自分の行動を「復讐である」「仕事である」と考え・そしてそれは事実であり、一般に言われる「精神異常者」というストーカーの定義と
著しく かけはなれているからです。
もちろん ストーカーの中には、精神異常者やボーダーラインの気質を持つ者もいます。当然
それは少数でありながら、精神学者・心理学者の門戸をくぐる人は そういった人ばかりとなります。
その結果、ストーカーに対する学説も「精神に問題がある人」に偏り、その他の大多数である「精神に問題のないストーカー」が無視される結果となりました
このため
被害者の中には「自分のされていることがストーキングだとは思わなかった」という方までおり、より一層
解決が困難になりつつあるのが現状なのです。
復讐を誓った者・仕事でストーキングしている者を
法律の世界に叩き込む事が、果たして解決になるのか。
ストーカーバスターの活動は、その現実に対する 闘いの場でもありました。
1997年・1月。
フジテレビ系列・共同テレビジョン・ストーカーバスター取材チームと、ダイアモンドアプリコットとの間に「取材に関する協定」が特別に交わされました。
取材において得た素材は報道素材と同等に取り扱い、保管においては取材チーム以外の第三者が行うと共に、許可なく報道する事はもちろん、情報番組・ドラマなど他の目的に一切使用してはならない
素材の使用にあたっては、被害者・ストーカーの区別なく、当事者の人権・プライバシーを最大限尊重し
当事者の生活に微塵の影響も与えてはならない
被害者・ストーカーから到着したメールは
すべて電気通信事業法において秘密が守られる。内容を撮影・引用する場合は、第三者を任命し、その者が個人情報を修正・削除した上でプレーンテキストにて引き渡す。またそのテキストは
修正後であっても、第三者に開示してはならない
ダイアモンドアプリコットは
取材チームに対し、被害者・ストーカー双方の住所・氏名・性別等の個人情報の一切を明かさない。対策現場に同行した者は、当事者に対して
同様の個人情報を聞いてはならない。また そこで見た事・聞いた事は 一般報道協定に従い、第三者に漏らしてはならない
素材は それを使用した直後、すみやかに破壊処分を行う
取材チームは 当初、この厳しい条件を「不当」なものと考えていました。
しかし、密着取材を進める中で この条件が「必要不可欠」のものであったことを実感するのです。

ストーカーバスターの活動の半分以上が、現場の調査と張りこみです。
ただし、その猟奇的な現場の迫力・緊張感は、取材チームのスタッフ誰もが これまで経験した事のないものばかりでした。
ストーカーのしていることは ハッキリ見えているのに、その姿は 誰も知らない。
ストーカーバスターが言った「白昼の暗闇」の意味を 取材チームは、現場に同行して はじめて知ります。
その恐怖に耐えきれず、取材チーム全員が、現場から逃げ出した事もありました。
また、撮るには撮ったものの 手が震えて 素材として使い物にならないものも多数ありました。
ストーカーの恐怖。
言葉にするのは 容易ですが、恥ずかしながら 取材チームは このとき
はじめて、被害者の気持ち・ストーカーの言いぶんが理解できました。
犯人を捕まえて・警察につきだす・あるいは説教するだけで 解決する世界ではない。そんなものはウソだ。
取材チームは このとき ハッキリ確信し、「取材に関する協定」の意味を知ったのです。
一方で、この恐怖と緊張に 臆することなく 立ち向かってゆける ストーカーバスター「山崎はるか」に
これまでにない興味を 取材チームは持ったのです。
この番組には、「ストーカーがいて」「それを捕まえるヒーローがいて」「感謝する被害者と」「反省して改心したストーカーがいる」いう、非現実的な展開は
ありません。これは そういった つくりものの ドラマや情報番組では ありません。
ストーカーとはなにか...それを追うものは 誰か。
その意味を追った はじめてのストーカー・ドキュメントなのです。
(ストーカーバスター取材チーム)