フェーズ3 ・ そしてジェネリックへ(豆乳からの調製)
・・・最初 「たくあん+野沢菜漬け?」 って感じだったが。
食べてるうちに、徐々に、独特の うまみが 湧き上がってきて、「これ、ちょー うめーじゃん!!」
ごはんに ばっちり合う。
さすが、江戸時代から「美味」で評判の漬物だけある。
ただ、いまいちラブレ感が すくないなー・・・と思っていたのだが、ちょうど 友人の上野宣氏が
京都に行くというので
「ちょっと 本場で 食べてきてくんない?」
と頼んでみたところ、
『これ、現地では、すげー ラブレっすよー!!』
と返事が返ってきた。
なるほど、ラブレの香味は やはり「生」の状態がいちばん強いらしい。
ちなみに京都では 「ラブレ漬け」というのまで出てるらしい。
ラクトバチルス・ブレビスの商品力、おそるべし。
無脂乳固形分1.0%ということは、すなわち 無調製豆乳(大豆固形分10%)が 1割程度ということであろうか。
これを基準に考えると、りんご果汁と にんじんエキスで、ほぼ90%ぐらいに考えたほうがよいかもしれない。
たしかに、りんご汁や にんじん汁は 特定の乳酸菌の培養に適した組成をしていることがある。
しかしだ!
市販の りんご果汁やにんじんジュースは、ほとんどが pH3.8〜3.9に調整されている。
これはもともとの素材の特性だけでなく、酸性を保つことによって、保存性を高める意味もある。
この酸度だと、おそらく L.ブレビスは 活発には増殖できないかもしれない。
水酸化ナトリウム水溶液でpHを再調整する方法も考えられるが、それでは「市販の材料」という点に反する。
つまり りんご汁 や にんじん汁での増殖については、今回は見送らざるをえない。
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もうひとつ問題がある、前回では豆乳の酸化試験は、pH5.1 が最高値であった。
これでは 保存食とはいいがたい。
「作った その日のうちに、“一気飲み”せよ!」
ということになりかねない。
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そこで 私の考えた解決策は、
ラクトバチルスブレビスの増殖だけできればよいのであって、酸凝固(ヨーグルト化)を目指してはいないのだから、市販の調製豆乳を用い、酸凝固直前まで培養する
上記で製造したブレビス豆乳液を、リンゴ汁他を使って pH調整を行い pH4.5以下にして保存・安定させる
ジェネリックとしての風味付けは、コンビニで買える物で代用する
の3点である。
1.発酵 | |||||||||||||||||
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材料
・設備
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調製豆乳とラブレで、35℃・約10時間発酵。 凝固寸前で 分離しはじめる程度。 |
pH5.2 よくかきまぜる。 |
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2.風味付け | |||||||||||||||||
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りんごジュース 200ml を混合 味見すると、この時点でも かなり それっぽい。 pH4.6 |
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ポカリスエット 200ml を混合。
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→ pH4.0
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お好みでキャロットジュースを わずかにたらす。(なくてもいい) | |||||||||||||||||
できあがり!! ジンジャー&ライム風味を、ポカリスエットのグレープフルーツ風味が代替して、植物性乳酸菌ラブレ風 ジェネリック飲料 のできあがり。 通常の3倍量を ごきゅごきゅ飲んでも、まだ この2杯分ある。 300ml単価 約¥85 |
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〔保存について〕 |
・・・と、ここまで カンタンに書いてはいるけどさ。
レシピ調整に 1ヶ月。
約9リットルの試作ジェネリックラブレ を飲むハメになったわけだよ。
一時は、もうあきらめようかと思った。
カラダや おなかの調子は すこぶる よくなったけどな。
無調製豆乳が調達できる人は ・無調製豆乳220ml ・「KAGOME 植物性乳酸菌ラブレ」80ml 計300ml を 35℃8時間発酵のうえ、 ・パイナップルジュース 700ml で パインラブレ豆乳仕立て にすると かなり濃いラブレが おいしく飲める。 |
●NG集 (失敗レシピ)
自作派の人には、成功例よりも「失敗例のほうがメタ情報として貴重」だと思うので、ここでいくつかの失敗例を紹介する。
1.砂糖液でラブレ増殖 |
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条件:10%の上白糖水溶液300mlを用いて、80mlのラブレを混合し
35℃・10時間。 結果:顕著な変化なし 理由推定: 乳酸菌培養に必要な アミノ酸・ビタミン(特にB群)の不在 |
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上白糖水溶液 300ml |
加温前の pH 5.0 |
10時間加温後 |
→ pH4.8 (温度誤差の範囲) |
2.ポカリスエット+プロテインでラブレ増殖 |
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条件:
1の砂糖水溶液の実験を受けて、各種アミノ酸や糖質を持つポカリスエット220mlと、タンパク質・核酸・ビタミンBのプロテイン20gを培地として
35℃・10時間。 結果:まったく変化なし 理由推定: わからん |
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材料各種まぜあわせて pH4.7 |
10時間加温後も pH 4.7 |
3.調製豆乳とりんごジュースでラブレ増殖 |
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条件:調製豆乳220ml + ラブレ80ml +
リンゴジュース100ml〜250mlで pH5.0に調製し 35℃・12時間。 結果:分離しながらも酸凝固 本家ラブレよりも ラブレ感たっぷりで、けっこうおいしく飲めるけど、酸度が弱い ラブレとしては優秀ではあるが、保存食にはなっていない |
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pH5.0 |
→ pH4.8 |
4.本家レシピどおりの比率でラブレ増殖 - やってはいけない! |
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条件: ためしに本家レシピを推定して 35℃・12時間 結果:まったく変化ないどころか、容器にカロチン色・カロチン臭が不着! のめるけど、ただの混合飲料。やってはいけない! |
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調製豆乳50ml |
りんごジュース200ml |
キャロットジュース 100ml |
色もちがうし(笑) |
5.低温発酵でどこまでいけるか(参考) |
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条件:調製豆乳220ml + ラブレ80ml で 30℃・120時間
(5日間)。 結果:pH4.5 で 安定(プラトー状態) |
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調製豆乳でもはっきり酸凝固する |
pH4.5 に到達した |
● 自家培養技術には到達・今後は 菌数カウントが必要だ
今回、一応 ジェネリックの製造までは成功した。
ただ、pHや においだけで、ラブレ菌の増殖状態を推定するには限界がある。
今後は、吸光光度計を用いた菌数測定を1時間毎に行うなど、ちゃんとした実験機材での実証を重ねる必要がある。
いずれやるとして、とりあえず ジェネリックが完成した時点で、ラブレ菌そのものの安定自家培養技術には到達したので、家庭用機材を用いた研究は、このあたりにしておこう。
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それにしても、本実験で学んだことは、「KAGOME 植物性乳酸菌ラブレ」が製品として いかに優秀であるかということだ。
ラクトバチルス・ブレビスの出す 香味は、単独では おせじにも 「がぶ飲み」できるものではない。
というか のみもの というより「食べ物」の味である。
それを、飲料として市販できる程度まで ティスト調製したばかりか、その結果が ピタリ・ pH3.8 というのは、もはや芸術である。
そこまで やるのがプロなのかと、おそれいった次第だ。
あなどれん、カゴメ! (正確には
カゴメラビオ株式会社)
・・・でも、挑戦は続けてやる。
(2008/1/10・山崎はるか)