アースノーマット(R)の真実

「アースノーマット・90日用」は、ほんとに90日つかえるのか

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いや、うそはついてないと思うんだけどさ・・・ 本当に90日つかえるの?

アースノーマット専用器具

電気蚊取器「アースノーマット」。
殺虫成分を炭素棒に吸収させ、それを約60℃のリングヒーターで熱し、殺虫剤を蒸散させることで、蚊を忌避・殺虫する装置である。

「アースノーマット」は、アース製薬の登録商標だ。
といっても、それは どこの名称なのだろうか。

薬品ボトルのほう? それとも器具本体?

じつは、ボトルの名称も、器具の名称も「アースノーマット」である。
(ボトルの商標出願日が1983年7月14日、器具本体が同年7月16日)

実務上、アース製薬では薬品ボトルのほうを「ボトル」または「取替えボトル」。
器具を「専用器具」と呼んでおり、このシステム全体を「アースノーマット」と呼んでいる。
ただ、販売時は、取替えボトル単体でも、専用器具とセットのほうでも「アースノーマット」というわけである。

それにしても、この取替えボトル。
そもそも 30日・60日・90日・120日・150日・180日が「同じボトルサイズ」というのが、いまいち釈然としないってこともあって。(揮発率と殺虫成分の濃度の違い で調節してるらしいけども)
いや、ウソはついてないと思うんだけど、念のため どれぐらいの精度でその日数を言っているのか確かめておこうと思ったのだわ。

というわけで、アースノーマット90日用は、ほんとに90日つかえるのか? ということを実験してみた。

※MINOLTA HT-11 レーザースポット放射温度計を用いた実測値

 

取替えボトルの仕様

取替えボトル90日用 重さの計測

アースノーマット取替えボトルは、30日用でも180日用でも45mlである。

ただ、蒸散速度を調整する成分や、殺虫成分であるピレスロイドの濃度はそれぞれ異なるはずである。
ちなみに電子てんびんで計測したところ、90日用は開封直後の状態で52.5g であった。
まずは、ここからスタートである。

取扱説明書では、1日につき12時間の使用が「1日」ということが明記されている。

なるほど、一般世帯の自宅にいる時間ってそんなものだからね。それにアカイエカの活動時間は日没から明け方ぐらいまでと言われているし。(ただしそれ以外の蚊 については活動時間帯にあまり特徴はないらしい)

というわけで、ACタイマースイッチを使って、きっちり12時間、正確に動作させるようにした。
動作時刻は帰宅前のPM4:00~AM4:00の明け方まで。
これだと スイッチの入れ忘れも、切り忘れもない。

開始日は2009年6月9日。測定場所は東京都中央区。約6畳の室内である。
1日につき12時間使用 ACタイマースイッチ

41日経過

ボトルの目文量の比較

2009年7月20日。実験から41日分を経過した。
見た目に半分ほど消費しているように見える。
重量は33.7g であった。

日量にして約 0.46gの消費であった。

 

ボトルの目文量の比較 33.7g

47日経過

31.3g

2009年7月26日。ためしに、この時期6日間でどれだけ減ってるか見たところ、重量31.3gで、2.4g減。

つまり日量は約0.4gの消費だった。

 

80日経過

80日経過 21.3g

2009年8月28日。21.3gである。
前回から33日で10g消費ということは、日量 約0.3g減。

やはり、消費量はちょっとずつ低下してるんだね。。

86日経過

目分量は残り1週間 19.3g

2009年9月3日。19.3gである。
日量 約0.33g 使用。ちょっと増えた?

見た目のラインでは、残り1週間。

91日経過(終了)

終了 17.5g


2009年9月9日(92日目)の開始直前に計測したところ、17.5gだった。

翌日の9月10日(93日目)も、同じく17.5gであり、これをもってプラトー(平坦)と判断。


86日目から1.8gを消費して、おそらくは 91日目の終盤ぐらいで、終了したものと推定

つまり、製品の示した 90日に対する誤差は 「+ 1day 未満」ということにな る。

おそるべし、アース製薬の技術!!
なんと正確な、砂時計っぷりだろう!

実験前、私は1週間ぐらいゆとりがあるものだと思っていた。
リングヒーターの個体差や、気温との相対差もあるだろうからだ。

だけども、ここまで自信を持ってピタリと終わらせられるのは、日本の技術者に特有の精神なのか、アース製薬の技術者の理念なのか、それともその両方なのか。
いずれにせよ、これは誇るべきことであるし、使用者としても驚くべきことであった。
いいものを見せてもらった。

容器を傾けて残量をみる


もちろん、気になることもある。
蒸散量が0.46g/日から徐々に減っていき、終盤では0.3g/日。しかし最終盤で0.33g/日以上に盛り返して一気に幕を閉じた。
ピークレベルから35%も蒸散量が落ちた時期に、室内が殺虫に適した有効濃度であり続けたかどうかはわからない。

もちろん蒸散量の低下が必ずしも空気中の有効濃度を下げるとは限らない。それは終盤の薬液中の殺虫成分がどのように構成されていたかでも左右されるだろう。

ただ、少なくとも言えるのは、本実験中、私は「一度も蚊に刺されなかった」こと である。
そして、この実験が終了して4日目に、見事に刺されてしまい、さらに翌日にも刺されてしまったので、やはり本実験中はどの時点においても殺虫・忌避効果があったと 推認されるだろう。(そして残留ピレスロイドによる忌避期間は4日であったということか。)


さらに、この実験で分かったことがある。

「電子蚊取器と ACタイマースイッチを組み合わせれば しあわせ 」

まず消し忘れを防げる。電子蚊取器にオン/オフのタイマーがついてるのがベストなのだが、できるだけ大量にボトルを消費してほしいメーカーとしては、消し忘れは大賛成なわけで、おそらく 蚊取器へのタイマー実装は企画されないだろう。

ただ、もう一方の、ACタイマースイッチの「入り」の機能は、ほんとうに有効であった。

私たちが、電子蚊取器をオンにするのは、どういうときか。
多くが「蚊に刺されて」からではなかろうか。
つまり被害を受けてからだ。その場合、防げるのは「被害の拡大」であって、一次被害は甘受していることになる。
それでは、殺虫・忌避が目的の本装置が、有効に活用されているとは言い難い。
だが、定時に自動でオンになれば、一次被害の時点から防げるということである。

また、ACタイマースイッチのもうひとつの利点。
それは「かならずしも12時間にしなくていい」ということである。
夕方5時から夜11時までの6時間に設定すれば、おおむね倍の日数を使用できる。エアコンで締め切った6畳以下の部屋であれば、その程度の蒸散時間で充分 に効果的というのが、その後の追試の結論だ。

今回、実験のためにACタイマースイッチを使ったが、予想外のところ有効だったので、その点を追記した。


なお、このシリーズの次の企画は『水性キンチョウリキッド90日用は、ほんとに90日つかえるのか』の予定。
・・・なのだが、近所で90日用の取替え液が売られていない。困った。調達できれば、すぐにやってみたい。

(2010/05/21・山崎はるか)
加筆:なし


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