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植物性乳酸菌ラブレの密造 (前編)

フェーズ1・牛乳によるヨーグルト増殖法

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いい商品なんだけど 高い

「KAGOME 植物性乳酸菌ラブレ」は、いいね。

乳酸菌の持つ人体への効果については いろいろ意見があるとは思うが、私の周囲では 便臭がほとんどなくなった という声がよく聞かれる。
(たしかに 私も それは実感する)

ただ、ちょっと値段が高いんだよね>KAGOME 植物性乳酸菌ラブレ

130ml入りで ¥110〜¥120ぐらいする。

なんとか ならんもんかなー・・・と見てたら。



生菌!

おいおい、ひょっとしたら なんとかなるかもよー!

課題

乳酸菌というからには ヨーグルトである。

まず 「KAGOME 植物性乳酸菌ラブレ」というネーミングは、なかなか いいと思うが、ちょっと アンフェア な気もする。

乳酸菌はどこにでもいるので、採取された場所でネーミングされるわけだが、「植物性乳酸菌」だけでなく、腸管性乳酸菌やら土壌乳酸菌やら、それこそ 場所で名前をつけてたら きりがない。
「都会性人間」「サバンナ性人間」「離れ島人間」みたいなもんだ。

 乳酸菌は乳酸菌である。

もちろん それぞれの気候風土(環境)に順応した「種」という考え方に まちがいはないので、それぞれに呼ぶことは自由だ。

ただ、どこに住んでいようが 食ってるものは ほとんど 同じ。
乳酸菌の食ってるものは、「糖」だ。
糖から乳酸を作っているから、乳酸菌なのだ。

なので 植物性乳酸菌 を、牛乳(の乳糖)で育てたとしても、問題ない。
同じように増えるはずだ。

カゴメさんが「KAGOME 植物性乳酸菌ラブレ」の製造に使用している乳酸菌の名称は Lactobacillus brevis KB290 (ラクトバチルス・ブレビス・KB290)とされている。
製品の名称は登録商標(第4999413号)だが、遺伝子改良したわけでもなさそうなので、この生菌をいただいて 家庭内で増殖させ、自分で食することに おそらく法的な制限はない。

ただ、この乳酸菌を牛乳で増殖させるのは、アフリカ人に、いきなり日本食を食わせるようなものかもしれんから、 ラクトバチルス・ブレビスくんは びっくり すると思うが・・・
その点については、彼らのハンパじゃない順応性と生命力に期待する。

もう一点。
カゴメさんが 混ぜ物なしの Lactobacillus brevis KB290 だけを 製品内に使用しているかどうか、確認する方法がない・・・という問題が ある。
いや ウソが どうのという意味じゃなくて、乳酸菌は よく「変異」するし、メーカーの製造(発酵)過程でも、酪酸菌や糖化菌と共生させて効率よく・おいしく発酵させると思う。
だから、KAGOME「植物性乳酸菌ラブレ」 の製品の中に Lactobacillus brevis KB290 だけが純粋に入っているはずはない・・・という意味ね。
なので、まとめて培地の中で発酵させると、他の別の菌が台頭してくる可能性もある。

ま、そういうことも含めて、このページで記載していることについては、実施において、健康上のリスクが伴うことをご承知願いたい。
この点についての問題は、後ほど重ねて述べる。



密造開始

以上の理由から、乳酸菌というからには、乳糖で培養するのが 最も適していると思うから、今回は「牛乳」を用いて ヨーグルト化することで、「植物性乳酸菌ラブレ」 の大量密造を行うことにする。

なお菌種として使用した直後から、ここで作られるものは KAGOME「植物性乳酸菌ラブレ」の派生ではなく、
・ラブレ菌の一種、Lactobacillus brevis KB290  を用いた発酵乳(ヨーグルト)
ということになる。
なにがあったとしても 、「KAGOME 植物性乳酸菌ラブレ」は関係ないから、そのつもりで。

 
1.準備

材料 ・設備

種菌 KAGOME「植物性乳酸菌ラブレ」130ml ( \110)
牛乳 市販の3.6牛乳 1,000ml ( \170 )
装置 富士パックス販売
ヨーグルトメーカー Y-1000  ( \2,480 )

ここでの 特殊なものといえば、ヨーグルトメーカーである。
ただし、これは 後述するが、ヨーグルトメーカーは ホットプレートなどで代用できる。

 なお、この ヨーグルトメーカー Y-1000 は、38℃〜40℃のヒーターで、発酵温度が若干、低め。
通常のヨーグルトを作る場合の発酵時間は12〜14時間。
室内気温に左右されやすいため、冬場は布等で囲ってやらないといけない。
安いから いいんだけどね。

2.加工開始
発酵を促すため、事前に 人肌まで予熱をかける。

 

POINT

そのまま沸騰温度まで上げて、人肌まで下がるのを待つと より衛生的であるが、破裂等の失敗・それを避けるための長時間の開封によるコンタミ(浮遊菌混入)のほうがこわいので、慣れないうちは 沸騰処理はしないほうがいい

 

種菌(ラブレ)注入

加温開始。
約38〜39℃
 
POINT

発酵時間は 念のため 約14時間。
 14時間後

おお?? おおおお! 凝固してるぞ!
透明な乳清も析出(?)してるし!

ヨーグルトになっている!

増殖成功だ!

試食

これは・・・かなり うまい!!
たしかに ヨーグルトなんだけど・・・香りが 普通のヨーグルト+独特の「香味」がする。
あと ぜんぜん 酸っぱくない。

たしかに「植物性」っぽい。いやほんとに。
酸味がないので砂糖いらない!
これ かなりいいよ!

 

だ が これで完璧とはいえないかった

あまりに酸味が少ないので、乳清を採取して pH を 計測してみた。



pH 4.7 ! 酸度が弱すぎる! これでは 保存食・ヨーグルトとは いえない。 理想的なpHは 4.1〜4.3 なのである。

乳酸菌が、牛乳を長期保存可能なヨーグルトに変えるのは 理由がある。

40℃前後の牛乳は、乳酸菌にとって 適切な生育環境であるが、同時に他の雑菌・たとえば黄色ブドウ球菌にとっても好ましい環境なのだ。
牛乳のphは 当初、弱酸性の6.5程度である。
よーいどん! で発酵を開始した瞬間、このときは 乳酸菌もブドウ球菌も 同じ条件で一斉に増殖を始めている。

しかし 乳酸菌が出す「乳酸」によって pHは どんどん酸性に傾き、それが ちょうど 牛乳の酸凝固点・pH4.6に到達した時点で、ブドウ球菌のほうは増殖できなくなり、増殖できないからには、結果として死滅する。
一方 乳酸菌は それでもかまわず どんどん増殖を続け、かなりすっぱい pH4.2 に到達しても まだ増殖している。
そうして 保存食・ヨーグルトが出来上がる。

 問題は この「酸凝固点 pH4.6」に到達するまでの時間だ。ここに到達しないと、腐敗菌は止められない。
最終的に酸凝固していたとしても、それまでに時間がかかりすぎていれば、ブドウ球菌を含む腐敗菌も「その時点までは増殖してから→死滅した」ということであり、発酵も起きているが腐敗も起きている かもしれない。

理想的な ヨーグルト製造では、発酵開始から pH4.6 の酸凝固点に到達するのに6〜7時間程度である。
しかし、14時間経過しても pH4.7前後 であったということは、もし雑菌が入っていたら 腐敗していたかもしれないということである。

ちなみに、 明治乳業 LG21は 以下のとおり、 製品時点で pH4.1 である。
完全に発酵しきって出荷しているということである。さすが プロのワザ (あたりまえだけど)。これでこそ 食の安全である。


 

おれも あきらめない

今回、発酵が思ったように進行しなかったのは、温度が低すぎるか・高すぎるか・糖が足りないか のいずれかである。

そこで 今度は ホットプレート(うちでは電熱スターラー)を用いて、湯せん45℃ ※1 による 14時間発酵を試みた。
 

 


14時間後 ↓

pH4.3! 原因は発酵温度だったのね(笑) 大成功!
より安全な ラブレ菌ヨーグルトの出来上がりだ。※2

なお 数値上の pH は酸性だが、口当たりは そんなにすっぱくない。
例の、ハーブのような独特の「香味感」も やはりある。

これが この乳酸菌・Lactobacillus brevis KB290 の特徴なのか、まだ わからない。

いずれにせよ、ラブレ菌(←たぶん)の自家増殖は成功した。
正しい菌種・菌量の測定はしていないものの、生菌率も含め すごい量の乳酸菌がいることは まちがいない。(→酸性度から勘案して)
コストは 原材料費+電気代で 1リットル300円程度である。

もちろん、これで けっして満足しているわけではない。
最適な培養条件(温度やpH)については追試が必要だろう。
あくまで このフェーズ1は「牛乳で増殖できるかどうか」、という試験結果にすぎない。。

次は いよいよフェーズ2 である。ぬははは。

-

念のために言っておくが、発酵と腐敗は、微妙な力関係にある。
実施される方は、まずは 普通のヨーグルトを作ってみて、自分にセンスがあるか たしかめたほうがいいと思う。
(いい加減なことしたら 腹こわすだけで すまないかもしれない)

だが、もし初心者が 最初から ラブレ菌増殖に挑戦するなら・・・

ヨーグルトメーカー最高級・最強ブランド・ タニカ ・ヨーグルティア ! これだ!
この製品、ヨーグルトメーカーではあるが・・・実際には万能発酵装置ともいえるレベルもので、パン酵母の発酵や、豆乳発酵、大きな声ではいえないが どぶろく ベース を作ることもできる。
いかなる乳酸菌も、この装置に入れてしまえば かもしまくらずにはいられない。
大学の研究室でも使ってるところがあるそうなので、性能については 折り紙つきだ。高いけどな。

まあ、毎日、ラブレ飲んでる人なら 余裕で もととれるだろうけど。

(2007/11/17・山崎はるか)

フェーズ2 >>

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※1 今回 用いた「湯せん」法 は、発酵温度(培養条件)が不明な乳酸菌に対して 私が用いている方法です。
1リットルパックでは写真の通り、湯に浸されていない部分が生じます。
たとえば、今回の場合 湯に浸されている部分は45℃ですが、そうでない部分では 最も低いところで32℃でした。
つまり ひとつの パック内で 32〜45℃の温度分布ができます。
この原理により、パック内の どこかで最適発酵がなされることが期待され、完璧ではないにしても とりあえず酸凝固は進行させられる・・・という原理です。
つまり 湯せんであれば、ホットプレートでも手軽に発酵可能になるので おすすめというわけです。

ヨーグルトメーカーを用いる場合における、最適な培養温度の追試は フェーズ2 で行います。

※2 ただし、外気に触れてこれだけ時間をかければ、KB290以外の乳酸菌で、強引に酸度が上がった可能性もでてきます。この時点での信頼性は、まさに、家庭レベルです。
精度を上げた追試は、以後のフェーズで行います。
 

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