私のような、ストーカー対策活動家(およびボランティアや職員)は、失恋という重大な喪失体験(対象喪失)をした人たちに、喪の服し方をアドバイスし、なおかつ共に喪に服すことで、ストーカーと呼ばれかかっている人(あるいはすでにそう呼ばれている人)を平常な状態に戻すことが、最初にして最大の使命である。
だから。
「被害者」と呼ばれるひとたちよ。
頼むから、失恋した人の 服喪の邪魔はするな。
罪悪感や自身の不安から、ふった相手に 再び電話やメールをするな。
電話番号もメールアドレスも変えるな。それは あなたの側が「まだ生きている」という重大なシグナルとなる。そのわずかなシグナルがストーカーのこころの中に、むなしい・起きるはずのない希望への暗い灯をともす。
服喪に慣れてない人物に対しては、電話番号やメールアドレスは、すくなくとも1年は放置しろ。あなたの物理的存在を 相手にとって、あるとも・ないともいえない状態、すなわち可能な限り「留保」の状態に置け。
ストーカーが信頼していない人物(特に親兄弟)が、間に立つな。それは最大のタブーである。その行為は電話やアドレスの変更以上に、あなたにアクションがあったことを明確にし、ストーカーの服喪を完全に中断させる。
間に立つべきは、ストーカーが信頼を置いている人か、それがいなければ 私たちのような対応経験を持つ職員やボランティア/NPOでなければならない。
(その点で、「未熟な」警察官の介入があることに、私たちは しばしば迷惑している。もちろん有能な警察官もいるが、そういう人ほど現場から離れてしまうことが少なくない)
そもそも、人は どのような失恋であろうとも適切な距離があれば、自然に服喪してしまうものなのである。
それがなんらかの理由で阻害されているのがストーカーであり、多くの場合、その阻害の原因は、まだ二人の関係ができあがる前のエピソードと・失恋した後の被害者の行動にある。
だから「被害者」と呼ばれたひとたちよ。
そして「被害者」を支援するひとたちよ。
失恋した人の 服喪の邪魔はするな。
邪魔しないでさえくれれば、たいていは なんとかなる。
もちろん私は、被害者であるあなたの生活も平常に戻すことが使命であるが、それはストーカーの行為を「いまだけ」制限することではない。まして力づくや公権力を背景とした恫喝によってでもない。
ストーカーの意識から、あなたに関する感情が消し去られることによってそれは成されるべきであると考えている。
そういった本質的な解決がなされない限り、何年・何十年とストーカーの執念をくすぶらせかねない。ストーカーの脅威は、あなたが一方的に安心したところで消え去るわけではなく、放置すればきわめて長期にわたり存在し続けるのだ。
あなたの行為と 誤った理解が、相手をストーカーに変えてしまうことがないように、ストーカー問題に対応する者のひとりとして、切に願っている。
(
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