最初はカウンセラーから ( まず あなた自身 )
ストーカー被害者の多くは長い緊張状態にさらされ、心身が疲弊している。出せなかった言葉にもあふれてる。その状態で、解決機関を訪れても、受けた被害・自身の状況をうまく言葉にできないことが多い。
なので、企業に属している人は企業内や提携のカウンセラー、学校ならスクールカウンセラーに会って、おもいのたけを まずはブチまけておくとよい。また、そういった組織に属していない人は、社団法人・日本臨床心理士会の電話相談を利用し、近くのカウンセラーを紹介してもらうとよい。
なぜカウンセラーがいいかというと、
- 問題点が絞れる
- 自分の気持ちがはっきりする
- 被害説明のリハーサル代わりになる
といったメリットがあり、不必要な緊張もとれる。
実際、「ストーカー問題相談室」に初めて訪れる被害相談者も、カウンセリングを受けた人とそうでない人ではかなり様相が違う。
一例として、被害相談では「インテーク」という「対面での状況聴き取り」を行うのだが、カウンセリングに行った人なら1日で済んでしまうことが大半なのに対し、それ以外の人は全体把握だけでも数日を要することがある。
当相談室も含めて、臨床心理士やカウンセラーと連携しているNPOは
あるが、人員が限られているのが普通なので、この部分については身近なカウンセラーを頼ってほしい。
周囲への相談は自分が信頼する人
ストーカー被害の多くは、一人で支えるには荷が勝ちすぎる。なんらかの急変が発生した際に、退避できる場所や物的支援が得られる状態が望ましい。
カウンセラーの支援を得て、自分の指針や目標が定まったら、そういった協力者を得るために、周囲に相談するのはよいことである。
ただし、ここで注意しなければならない。
相談した相手が「勝手に動く」ことがある。特に会社の上司などに不用意に相談すると「聞いた以上は何もしないわけにはいかない」ということになる場合もある。
ここで必要なのは、あなたへの物理的支援なのであって、問題解決ではない。問題解決に適した人選は また別にある。
難しいのが両親・兄弟などの親族である。つい一方的で力づくの行動に出やすいため、事態を悪いほうにころがすことがある。相談するには、次の項も含めて、慎重に判断せねばならない。
仲裁者は相手が信頼する人
恋愛ストーカーの解決において、けっして外せない思想がある。
それは、
「相手はあなたに好意を寄せる権利がある」
そして
「あなたは それを断る権利がある」
という対等原則である。※
両方に権利が存在する以上、どちらが不利とか有利という問題は存在せず、また好意の有無を理由に、どちらかが、一方を攻撃・または敵意を見せてよいというものではない。
恋愛ストーカーを仲裁できるのは、この思想に基づく人で、可能な限り恋愛ストーカーが信頼している人がのぞましい。
一線を越えた脅迫や暴力が 現になされているなら別だが、そこまで切迫していないなら、一般の人でも恋愛ストーカー問題の仲裁は可能である。
恋愛ストーカー対策における、ストーカーに行ってもらう最初のマイルストーンは、
「あなたに好意を寄せる権利」を
「あなたに好意を持つ権利」にまで抑えてもらうことである。
同時に、これを被害者が承諾し、なおかつわきまえることである。
もし被害者が、自身の権利だけを一方的に主張するなら、ストーカーもまた自身の権利を曲げることはないだろう。
それでは、ストーカー問題は解決しない。
仲裁者は そのことを理解し、公平に双方の利益を調停できる人物が望ましい。
当然ながら、仲裁者にはあなたが持つすべての情報を提供しておかなければならない。
警察を頼る判断はどこでするか
その判別は比較的シンプルだ。
脅威度の高い順から述べる。
ひとつは嫌がらせやストーキングが行われているにもかかわらず
「こちらから相手に連絡がとれなくなったとき」
である。
それはストーカー自身のある種の決意表明になっていることがあるので、私たちストーカー対策活動家は、その事象を検出すると最大に警戒する。
だから、被害者には絶対に電話番号やメールアドレスは変えるな、着信拒否はするなと、口酸っぱく言っているが、被害相談が行われた時点で、すでに変更済みなことが多々ある。つまり被害者自ら相手との連絡手段を断っている。
そうすると、相手の交友関係を経由して連絡先を教えてもらったり、相手方の自宅の前で待つなどするが、それは連絡がとれなくなったことが判明してから72時間以内に行わないと、あらゆるリスクが急速に上昇する。
被害者の退避も限界があるので、その場合は、私たちでもやむなく警察に連絡している。
また、そのような切迫する事態でなくても、相手の正体が不明で、連絡の取りようが最初からない場合も、72時間の調査を限度に、被害者に警察への連絡を推奨している。
ふたつめは、薬物・アルコール・精神疾患などにより認知にゆがみが発生している場合。これはストーカー対策というより「治療」になるので、警察を経由して強制力を用いる必要がある。
みっつめは、暴力が目的化している場合。つまり「破壊」が目的となっているケースである。被害者を静止するためにおもわず手首をつかんでしまったとかは、外見上「暴力」のひとつだが、これには含まない。しかし殴打は暴力の目的化とみなすことがある。ケースバイケースだが、連続した場合は、DVの扱いに変更し、警察への連絡と退避を推奨している。
さいごは、あるマジックワードを相手に投げることである。
それで相手の態度に変化が生じれば、自力解決が可能なので、警察を頼る必要はない。その言葉は、恋愛ストーカーの9割以上が反応し、半数がその言葉ひとつで解決してしまうため、私はそれをマジックワード(魔法の言葉)と呼んでいる。
それは被害者自身にもできることなので、メール相談でも「こう言ってごらんなさい」とすすめることがあるほどだ。
それについては、またの機会とするが、そのマジックワードでまったく反応がなければ、恋愛ストーカーではない「別の素因」が示唆される。すなわち常識とは異なる価値体系の人物であることが強く推定されるので、前科・前歴の有無を調べる意味でも警察に連絡する。
(別編3 おわり)
→次回の内容はまだ決めてません