mixiの退潮傾向に想う事(1)

私たちは なぜmixiを選んだか

△メモエリアにもどる

このエントリーをはてなブックマークに追加
Yahoo! bookmark
Check

1

mixiの退潮傾向に想う事 - 1

 mixiが「やらかしてしまう」ことを、いちいちあげつらう人は たくさんいる。
だけども「私たちが なぜmixiを選んだか」について、自分自身を分析して語る人は少ない。
 他人のやることには つばを飛ばしつつ よどみない舌鋒たからかな人でも、いざ自分のこととなると、自慢の舌はうまくまわらないものなのかもしれないね。


 それはともかく。
何かを行う際に、
「なぜそれを選んだか」そして「なぜ それ以外を選ばなかったか」
を両立して明確にすることは、議論のうえでとても重要だ。
「選んだそれがいちばんであり」かつ「それしか なかったんだ」と抗弁できる状態であれば、衝突したときも相手に理解を求めることができる。

 これは、ごくあたりまえのことで、私たちは コンビニでアイスひとつ買うときも
無意識のうちに「それを選んだ理由」と「それ以外を選ばなかった理由」を残酷なまでに菓子メーカーに突きつけている。
ただ、それを明確な言葉に置き換えてないだけだ。

 この「それを選んだ理由」と「それ以外を選ばなかった理由」を言葉にする努力を日ごろからしてると、説得力を身につけることができるんだけど、ま、その話はまたの機会でいいや。
-

 多くの人が 「mixiを選んだ理由」はなにか。
それは、おそらくSNSというコミュニケーションツールの入門として、mixiには過不足ない機能があったからだと思う。
とてもわかりやすかったし、先取的であった。

 では、ほぼ同じ機能・あるいはそれ以上の機能のSNSが他から現れ始めたのに、
途中からでもそういった「mixi以外を人々が選ばなかった理由」はなにか。
それは、「mixiという場所が、お祭りになっていた」からだと思う。

 人は 人が集まっているところに興味を持つものだ。
これは人の本能である。人が集まるのは、そこに魅力的ななにかがあるからだ。
そういう期待から、人は人が集まっているところに興味を持つ。
「お祭り」は、そういう期待と人を自律的に集中させる 人工的な仕掛けである。

 mixiの草創期は、超!あたらしもの好きでユーザーが満ち溢れていた。そこにいるのはマーケティング理論でいうところのイノベーター(革新的採用者)やアーリーアダプター(初期採用者)であり、こういった経済や文化を先導する人種が書く「日記」つまり「オピニオン」は、まことに読みごたえがあり楽しく興味深かった。
 そういった人の描くイベントやエピソードに、人が人を誘う招待制SNSという仕掛けが「お祭り」を作った。
お祭りなのだから、私たちも盛り上げてやろう、参加しようという「参与」「実践」の熱気にあふれた。

 ところが、これに冷や水を浴びせる最初の出来事が発生した。
2006年2月の「3ペイン問題」である。
3ペインとは いまのmixiの主流デザインでもある
「左:コンテンツ選択」「中:本文」「右:トピックス」
という構造のことだが、それまでは2ペインだったのを、ほとんど予告なく(ユーザーの同意なく)いきなり採用・変更した事件である。
 ユーザーへの同意や告知期間を設けることなく、突然 デザインを変えてユーザーを混乱させ、怒りを買うというmixi定番構造の第一回だった。
 mixiは あまりの反発の大きさに、あわてて、元に戻したが このとき「運営側」という言葉が生まれた。
 それまでmixiは、その社員や経営者もユーザーも相互に働きながら一緒にたのしむ「お祭り」として皆が参加していたはず・・・そのつもりだったのに、ここではじめて
「このひとたちは 我々と違う」
という認識が生まれ、それをmixiに対する「側」(サイド)という言葉で表現するようになった。
 この3ペインは、翌年2007年10月になしくずし的に再採用されることになる。
 ただ、その程度で消えるお祭りの火ではなかったから、これは持ちこたえた。

 だが、運営「側」という立場の違いを、致命的に明確にしたのが2008年4月の「規約18条問題」であった。
「日記や写真はmixiに著作権が帰属する」
という主旨の規約改正である。
 これには、読みごたえのある「日記」を生産していたイノベーター/アーリーアダプターたちが怒った。彼ら経済や文化を先導する人種が
「なぜ私たちは mixiで日記を書いてるのだろう?」
と、はたと気づき、懐疑の目をmixiに持つようになる重大な事件であった。
 mixiの先導役だった彼らは「日記」を引きあげるようになった。
mixiは重要なコンテンツ源を失ってしまった。
 これによって運営側はニュースにコメント日記をつけられるようにして一般ユーザーを刺激し、ページビューを稼ぐ方向に持っていかざるを(依存せざるを)えなくなってしまった。

 この事件は、痛烈なボディブローとなってmixi経営陣を悩ませたことだろう。
 まの悪いことに、当初、mixi経営陣は、日記の魅力が下がった理由が、時代の変化やネタ切れと誤認してしまっていたふしがあり、先導役の不在が原因とは考えていなかったようだ。事実 2009〜2011年中盤まで「日記に依存しない」「日記を書かせない」レイアウトに持っていっていた。日記を捨てようとしたのだ。
 最近になって、それが より致命的な舵取りだったことに気がついたのか、日記回帰の動きを見せている。

 だが、遅すぎたと僕は思っている。
人々が なぜmixiを選んだのか、そしてそれ以外を選ばなかったのかという本質的な部分を見抜けず、ただ迷走をしているにすぎない。
そういう印象だ。

(続く)


1

2011/11/25・山崎はるか
(原典・2011/9/29)

※「mixi」は株式会社ミクシィの登録商標です。


(C)DIAMOND APRICOT TELECOMMUNICATIONS LABORATORY / since 1995
ホーム | お問い合せ